秋 篠 寺

「ある時天上では、大自在天王(シバ神)が大勢の天女達に囲まれて、天界の音楽や踊りを楽しんでいた。すると忽然として、大自在天王の髪の生え際から一天女が生まれ出た。その容姿の端麗なことはもとより、技芸に秀でていることは、並み居る天女達の遠く及ぶところではなかった。居合わせた天女天人達は一斉にその優れた才能を称えて、かの天女を伎芸天と呼んだ。伎芸天は、多く集まった天女天人達の中に立って、(もし、世に祈りをこめて田畑の豊作や、人生の幸せや、家庭の裕福などを願うものがあれば、私がその願いを悉く満足させよう。又学問や芸術に関する願いを寄せるものには、その祈願を速やかに成就させよう)と語った」 漢訳密教経典「伎芸天念誦法」より 秋篠や 外山の里は きりたちて 稲葉のすえを わたるかりがね 西 行 秋篠の み寺をいでて かへりみる 生駒がたけに 日はおちむとす 会津 八一 諸々の み佛の中の 伎芸天 何のえにしぞ われを見たまふ 川田 順 秋篠の 伎芸天女の 印むすぶ ゆび細々と 空に定まる 鈴木 光子 伎芸天女 寒きしじまの 夕にすら 匂ひこぼれて 立たせ給へり 松山 ちよ 秋篠は げんげの畦の 仏かな 虚 子 一燭に 春寧(やす)からむ 伎芸天 青 畝 秋篠寺 金堂跡