宝 篋 院

 入山受付の横にある小さな芝戸を開けて入ると、そこには錦繍の世界が広がっている。俗世間を離れた別天地のことを、壺中の天と言うが、ここはまさしくその意味で紅葉に満ちあふれた壺中の天である。昨年、今年と色々な紅葉の名所を巡ってきたが、その中で自分なりに評価を下せば、この宝篋院の紅葉がベストであると言えよう。

庭自体の構成はきわめて単純であり、本堂の前庭の中央を真横に横切る参道とそこより本堂への参道があるのみで、少しの起伏や枯山水風の箇所はあるが、全般に平庭の全てに楓樹が植え込まれている、どちらかと言えば平板な庭である。しかしこの紅葉の時期にはその庭全体の楓が紅葉して、見事な錦繍を織りなすのである。庭の後ろのほうには竹藪もあるが、紅葉の庭が長方形であり且つあまり広くないことも、庭としての統一感を創り上げているのかもしれない。陽を透かした紅葉の葉の美しさを、存分に味わうことが出来た。

宝篋院を出て、二尊院の方へと回る。二尊院の紅葉も盛りを過ぎているようなので、中に入るのを止めて、そこより少し下ったところの茶店で小休止する。そのあと落柿舎の前を通って、野宮神社に参る。ここに来たのも二十数年ぶりである。ビロードのような苔の庭が印象的であった。野宮神社からJR嵯峨野の駅に出る。駅で電車を待つ間に、有名な嵯峨時雨がぱらぱらと降ってきた。

宝篋院


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