妙 法 院
玉座の間の濡れ縁に出て、瑪瑙の手水鉢を見る。案内の女性によれば、秀吉遺愛の品であり、材質は白大理石であり、柱の一部を切り取ったものを南方経由持ち込んだものらしい。それを寝かせて上部を穿って、手水鉢としたものである。桃山時代の、南蛮渡来の品の嗜好がよく判る。ここより見渡せる奥庭は、旧積翠園名残の庭であり、小堀遠州の作とも伝えられている。もともと流水の庭であったものを、流れが止まったため池としているが、池の底にコンクリートを張っているのがよく見えてしまい、その上築山あたりも剥げて土が露に見えており、実に風情に欠ける。左手の池の所には八つ橋が架けられており、そこには珍しい形の松も植えられているが、庭全体の手入れが全く不十分で、鑑賞するに耐えないのは残念であった。 大玄関を出て、大門の正面にひときわ高く聳え立つ庫裡(国宝)を見る。秀吉の千僧供養ゆかりの建物で、文禄四年(一五九五年)頃の建立である。棟高六十尺と言う大建築であり、桃山期の工匠の手になる名建築である。これまで見た庫裡の中では、最も規模の大きなものと言える。外に出て、もう一度庫裡の建物を見る。実に雄壮な造りであり、これが炊事用の建物だとはとても思えない。 妙法院の庫裡