天 授 庵

 つぎに訪れたのは、天授庵である。ここは南禅寺の開山、大明国師普門禅師を奉祀する開山塔である。大明国師は東福寺の第三世であり、亀山法皇が奉じて開山としたときは老齢であり、南禅寺が寺として整う前に東福寺の龍吟庵で入寂した。

そもそも亀山法皇が大明国師に帰依されたのは、法皇が妖怪の出現に悩まされていた折に、一言の読経もせずにただ規矩整然と坐禅するのみで、これを鎮められたためという。しかし実際に南禅寺を完成させたのは第二世の規菴祖円禅師であったため、大明国師の開山塔は造られないままであった。これを憂えた第十五世虎関師錬が、一三三六年に光厳上皇の勅許を得、塔を霊光、菴を天授と名付けて開創したものである。しかしその後応仁の兵火などで荒廃していたのを、一六〇二年細川幽斎の支援を受けて復興したものである。

庭園は本堂前庭(東庭)と書院南庭に分かれている。まず方丈前庭に入る。ここは左手に正門があり、そこより方丈中央へと石畳が鉤型に白沙の上に敷かれており、これがこのお庭のアクセントになっている。その向こうは横一列に樹木が植えられており、その前に石を配置している。余り装飾をしていない端正な庭で、紅葉が一番の見頃である。落ち着いた優しい感じのする庭園であると思う。

天授庵 方丈前庭


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