詩 仙 堂

 丈山はこの詩仙堂に凹凸カ十境を見立てている。入口に立つ(一)小有洞の門、参道を上り詰めたところに立つ(二)老梅関の門、建物の中に入り(三)詩仙堂、読書室である(四)猟芸巣(至楽巣)、堂上の(五)嘯月楼、至楽巣の脇の井戸(六)膏盲泉(コウコウセン)、侍童の間(七)躍淵軒、庭に下りて蒙昧を洗い去る滝という意の(八)洗蒙瀑、その滝の流れこむ浅い池(九)流葉泊、下の庭に百花を配したという(十)百花塢(ヒャッカノウ)がそれら十境である。そのほかに名高いものとしては、丈山考案の「僧都」(添水、一般には鹿おどしとも言う)も園内に配されている。

小有洞から老梅関に至る鬱蒼と茂った竹林の趣が、俗界からこの聖賢の住まいに入るための導入部として、誠に良くできていると前回も思ったが、もう一度訪れてみてその思いを強くした。やや薄暗い篁より老梅関を潜ると、そこには清閑な庭と建物の佇まいが現れる。そして詩仙の間を見て、書院の畳に座して刈り込みとその左手の庭を観賞する。この庭には洗蒙瀑から流れ込む流葉泊があるが、そこには手水鉢、石塔などがあり、刈り込みのみの庭よりは、こちらのほうが風趣があると思う。先程の圓光寺を見ていたころからの雨足が、やや強くなり樹木の葉に当たって音を立て始めた。それでしばらくゆっくりと座り込む。やがて雨足も小降りになってきた。そこでいったん入口から出て、残月軒のそばより庭にはいる。中段の庭から下段の庭に下りるところに、背の高い紫苑が二三本花を開いている。薄紫の清楚な色がこの庭に良く写る。下段に下りるその途中には芙蓉の花も咲いていた。十方明峰閣と呼ばれる座禅堂は、その建物も庭もやや詩仙堂の風趣とはあわない感あり。

いまの庭は丈山没後、百年して改修されたと書かれてあるが、いずれにしてもこのような山畔を利用して、趣のある庭を造り上げた丈山の創意はなかなかのものである。景色としては中段の池のあたりから、斜面正面の篁を望むところがよいと思われた。

詩仙堂 庭園


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