出 光 美 術 館

出光美術館開館五周年記念・国宝伴大納言絵巻展を見に行く。伴大納言絵巻は、平安前期八六六年、清和天皇の時代に起きた応天門の変を題材としている。これは藤原良房が始めて摂政となった時代のことで、これより前の承和の変では橘逸勢が追い落とされて橘家の勢力が弱まり、この応天門の変では大伴氏の伴善男が政治的に抹殺されて行き、藤原時代が本格的に始まって行くのである。この絵巻のストーリーは下記の通りである。

「内裏の枢要な門の一つである応天門が、何者かによって炎上された。主人公は伴善男(とものよしお)中宮大夫、時の左大臣は源信(みなもとのまこと)、右大臣は藤原良房である。源信の弟の定と弘が大納言となった頃より、伴善男と源信は対立。源定と弘の死により、伴善男が大納言となる。応天門の炎上は伴大納言の讒言により源左大臣の罪とされる。しかし左大臣の罪は晴れる。そして本当の犯人は分からない。ある時舎人の子供と伴家の出納(しゅつのう)の子供とが喧嘩をする。出納が、舎人の子供を足蹴にする。怒った舎人が、応天門炎上の夜の伴家の不審な行動を暴露する。そして舎人は検非違使庁で尋問され、伴大納言は逮捕される。」

絵巻の感想は、まず絵巻の縦巾が思ったより大きく、ひとりひとりの人物のフォルム・表情をしっかりと捉えて描き上げているということである。人物の輪郭の描き方の丁寧さ、その線の絶妙な濃淡と太さ細さの妙。三大火焔表現の一つとされる紅蓮の炎と黒い闇の使い分けの見事さ、その色彩は保存が極めて良くまた配色のバランスは素晴らしい。色彩を上手く利用して立体感を出しており、描写の正確さと躍動感などの動きの表現は飛び抜けているように感じた。又時間の推移を途中に樹木などを描くことで示す方法なども、印象的であった。こうした絵巻物には、常日頃余り関心がないが、この絵巻については流石国宝だけのことはあると感じた。

 

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