縮 景 園(広 島)

 有年場の上の展望の良い見晴らし台にある亭を通って、薬草園へ行く。そこから今度は香菜園へ廻る。そこは茶畑の上に満開の桜と桃が咲き誇っている。京橋川沿いに山道を巡って、悠々亭に至る。ここからの跨虹橋の眺めが見事である。濯纓池(たくえいち)には大小十幾つかの島があるが、この悠々亭からは手前に亀の形をした島が据えられており、遠景の跨虹橋とその手前の島、その向こうには数寄屋造りの清風館が望め、園内で最も眺めの良い場所であると思われる。縮景園の地割りは、実際の面積を何倍にも大きく見せるために各部は極めて変化に富んでいて、深山幽谷、広がりのある池の展望、あるいは海浜の景というように、四季の風情と共に変化と統一のある景観を備えている。池の中央に架けられた跨虹橋は七代重晟が橋の名工に二度も築き直させたものであり、小石川後楽園の円月橋、修学院離宮の千歳橋にも似た大胆奇抜な造りとなっている。悠々亭より池畔を歩く。左奥を見ると、三つの土橋が三美人の微笑した唇のごとしと表現されているとおりに、優婉に見える。跨虹橋の廻りを一回りして、それから白龍泉を通り、明月亭の茶室に廻る。そこから古松渓を越えて、夕照庵前の州浜を見る。梅林のそばの調馬場より、桜の馬場へ行きそこから超然居へ至る。ここから見る池泉庭園の眺めもまた見事である。当園は小石川後楽園や岡山後楽園、六義園と比すると、規模は小さく彦根の玄宮園と同じくらいの大きさであるが、様々な変化に富んだ趣向を凝らしており、極めて完成度の高い大名庭園である。

跨虹橋の眺め


コメント

このブログの人気の投稿

県 神 社

天 龍 寺

金 閣 寺