智 積 院

 宝物館を出て、門を潜って智積院の中にはいる。そこには立派な新金堂が建っている。当院の沿革によれば、昭和四十八年の弘法大師生誕千二百年事業として造営が開始され、昭和五十年に完成され、本尊は大日如来とのことである。しかし五年ほど前に来たときには、この本堂の印象がないのは不思議である。金堂横より上がって、名勝庭園を鑑賞する。この庭園は利休好みの庭といわれ、中国の廬山をかたどって造り上げられている。正面の石橋より右側は、祥雲禅寺時代に造られたもので、滝のある正面とその左側は江戸時代に入って修復されたものである。濡れ縁の右手、中央そして左手からと庭を眺める。こうしてみると、濡れ縁の左端の池が建物の下に入り込んでいるところからの眺めが一番である。正面の滝の落ちている築山はかなりの急斜面であり、それが丸みを帯びてぐっと前にせり出してきている。滝はその斜面の途中から落ちており、滝の出口のすぐ下に石橋が架かっている。築山の斜面全体には刈り込みと石が、バランスよく配されている。滝の水が池に落ちかかるところの石は、滝の水で穿たれたようになっているのも面白い。その右手には大きな石を立てている。左手奥にも池があり、正面の大きな池との境目に、石橋が架けられている。庭の右手の築山は、丸い刈り込みではなく斜面一面の刈り込みとなっている。右手の方は池がやや奥に引っ込んでおり、土橋が架けられている。そしてその手前の池の中央には、石橋が二つ繋がっている。上を見上げると、築山の斜面の向こうには、大きな樹木が壁を作るかのように並んでおり、これもまたこの庭の背景となって、全体の構図を深みのあるものにしている。築山の頂上には一基の灯籠と古木が並んでおり、なかなか味わいのある名園である。その後金堂の中の展示品を一通り見て、智積院を辞す。

智積院の庭園


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