法 華 堂

 法華堂(三月堂)に廻る。この法華堂は天平十二年(七四〇年)頃に建てられた、東大寺最古の建物であるという。この辺りには聖武天皇と光明皇后の皇太子・基親王の菩提を弔うための金鐘寺と言うお寺があった。それがやがて大和国国分寺、さらには東大寺へと発展したのである。不空羂索観音を本尊とするため、古くは羂索堂と呼ばれていたが、毎年三月に法華会が行われたことから、後に法華堂と呼ばれるようになった。現在の御堂は鎌倉時代(一一九九年)に、重源上人によって新造されたものである。御堂に入る。中には不空羂索観音を中心にその脇侍として右に日光菩薩、左に月光菩薩が祀られ、その前には阿形・吽形の金剛力士が立っている。次いで右左に不動明明王と地蔵菩薩が並んでいる。その後ろ四隅に立っているのが、梵天・帝釈天・弁財天・吉祥天である。そして後ろの中央には秘仏・執金剛神が厨子内に安置されている。そして壇上の四隅には四天王が配置されている。この御堂に安置されている御仏十六体のうち、天平時代の作が十四体である。そして地蔵菩薩、不動明王に二体は木造でそれぞれ鎌倉時代、室町時代の作である。天平時代のもののうち、執金剛神、日光・月光菩薩、吉祥天、弁財天は塑像で残りの九体は乾漆像である。日光・月光菩薩と吉祥天、弁財天は後に運び込まれたものという。この法華堂は本尊からすれば、当初はもっと屋根の張りの高く一回り大きな御堂ではなかったかと思う。御堂自体が鎌倉時代に一回り小さくなったのに加え、当初はなかった六体の仏を運び込んでいるわけである。したがって、この御堂に収まる御仏は、極めて窮屈な思いをされているように感ずる。御堂の空間と、御仏の配置にもっと東大寺としては心を配るべきではないか。我々はこの法華堂に来ると、博物館で仏像を拝しているような感じを覚える。その故もあろうか、この御堂の御仏達に私は余り心を動かされないのである。

法華堂


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