慈 光 院
法起寺より自転車に乗って、二山を越える。サイクル・ショップの主人が自転車で大和小泉の慈光院まで行くには、途中に二山あるので少しきついだろうと言っていたが、その通りであった。慈光院は小高い丘の上にある。丸石の敷かれた登り道を、自転車を押して上る。山門を潜り「あられこぼしの道」を進むと、萱葺の立派な楼門がある。この楼門は、片桐且元の居た茨木城より移築されたものであると言う。なかなかに風情のある門である。楼門を入ると、入母屋造りの書院がある。書院前庭には、下り松がある。
当院は寛文三年(一六六三年)に片桐且元の甥であり、石州流茶道の始祖である片桐石州により、父貞隆公の菩提寺として建立された、臨済宗大徳寺派のお寺である。書院に入り、赤い毛氈の敷かれた座敷に坐って、抹茶を頂く。お菓子は片桐家の紋様の形をした餡入りのお干菓子で、なかなかに美味である。書院正面には大和青垣の連峰を借景として、生け垣が低く植え込まれている。右方には手前に下り松、その向こうに躑躅の大刈り込み、その向こうには柘植を配置している。書院の角に当たる方向は、低い刈込を配し、その後ろには松が林立している。正面の借景にはゴルフの練習場・ビル・電線の鉄塔などがあって風情が薄れているが、風景の広がりの素晴らしさは今でも味わうことが出来る。右手の白砂と大刈込を配したのみの簡素な庭と、正面の展望の開けた借景を目にしつつ茶を喫すれば、心は自ら落着いてゆくようだ。書院に坐して見える広がりは、実際には九十度くらいの展望であるのに、印象としては百八十度もしくはそれ以上の広がりを鑑賞者が覚えるのも、石州の空間の処理の見事さからくるものなのであろう。庭に置いてある石州作の手水鉢および蹲四個は、いずれも味わい深いものであった。この慈光院の借景庭園は、見るものの心を静謐にさせる名庭園であると思う。
慈光院八景( 大和八景 )
金閣寺鳳林和尚 詠
三 笠 新 月
松 間 双 塔
渓 橋 帰 客
三 輪 滴 翠
雲 海 残 剰
高 鳥 夕 陽
葛 城 白 雲
大 峰 晴 雲
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