法 隆 寺 大 宝 蔵 殿

大宝蔵院に入る。ここには多数の宝物が展示されているが、とりわけ高さ六十センチ余りと思われる夢違観音像(国宝・白鳳時代)の美しさ、崇高さに心惹かれた。この観音像に詣れば、よく悪夢を変じて吉夢と為すことが出来ると信じられ、ために夢違観音と呼ばれているようである。微笑を帯びた御面相、胸からお腹にかけての張りのある曲線を有する体躯、流麗な衣の線などに白鳳時代の優れた特色を発揮しているとある。優しい微笑みを帯びた慈愛のあるお顔、切れ長の目と眉毛、微笑みを含んだ口許、長い耳朶、頭冠は正面が化仏、左右は水滴のような形をした飾りがあり、それを冠帯で止めている。胸飾り、右上膊部の腕飾り、右手は中指を前に折って挙げ、左手は下げて薬壺を持っている。側面から見るとややせり出した柔らかなお腹と、安定感のある腰回りをしており、衣の線が誠に美しい。

    Yumechigai Kannon --- who turns nightmare into happydream

 次は百済観音像(飛鳥時代)である。二メートル強の長身であり、かつては彩色鮮やかであったのだろうか、色彩が剥落して赤みがかった色のみ残っており、ためにお顔が爛れた感じで無惨な印象である。透かし彫りの頭冠は、こめかみより左右に長く垂れ下がっており優雅である。お顔は剥げているため御面相ははっきりしないが、仏のお顔というよりは人物を写したように感ずる。眉毛と目の間が広く、お口は小さく引き締まっている。鼻も後代の仏と比すと、より人間的である。目で測る感じでは八頭身かと思えるが、案内の人の話では十頭身とのことである。右手は掌を上にして曲げて差し出されており、左手は香壺を持っている。両腕に懸かった天衣(てんね)の線が下に流線を描いて巾広となっており、流麗である。光背を支えている竹と思われるものも、木彫であるとのことである。百済観音堂建立のためのお賽銭を入れる。

百済観音を見たのち、その前に展示してあった文殊菩薩像(飛鳥時代)をもう一度見直す。これも百済観音と同じく瞼が巾広で、鼻もすっきりとして小さくお口も引き締まっている。これが飛鳥時代の仏像の特徴なのかもしれない。腕に懸かった天衣の流麗さもよく似ている。同じところに展示されている観世音菩薩、普賢菩薩と比べると、文殊菩薩のお顔が最も柔和であり品がある。そのお顔は中宮寺の弥勒菩薩とも、よく似ていることが判る。その他には推古天皇御物の玉蟲厨子(国宝)があり、この中には金銅聖観音立像が納められている。唐草模様の彫金金具の下に、玉虫の羽を貼付して装飾としたものである。橘夫人御厨子は白鳳時代の作で、光明皇后の母公・橘夫人の念持仏・金銅阿弥陀三尊像を奉安している。

大宝物殿を出て、南大門へ向かう。鏡池前からの西院伽藍を写真に撮る。南大門で自転車に乗り、夢殿に廻る。 

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