萬 野 美 術 館

 次に御堂筋に面した萬野美術館を訪れる。この美術館の創立者、萬野裕昭は明治三十九年生まれで海運・不動産・外食産業などを手広く手がけて財をなしたという。古美術を中心として蒐集しており、茶室裕裕庵も館内に造られている。国宝が三点あり、その一つに玳玻天目茶碗がある。天目は福建省の建窯で妬かれた黒釉碗であり、黒く発色した鉄釉の器物を天目と呼ぶ。天目の中で有名な物は、油滴・曜変・禾目とあるが、油滴の斑紋は釉中の酸化第二鉄が表面上に浮いて結晶した物である。曜変は黒い釉面に大小の結晶が浮かび、その周りに暈天状のぼかした虹彩を持つ物である。世に現存する物は五点のみと言われている。玳玻は天目釉の上にさらに失透性の藁灰釉を振りかけ、黒字に飴色の斑紋を持っている。この萬野美術館にあるものは、玳玻天目散花文茶碗と呼ばれている。なかなか見事な茶碗である。当美術館はビルの中に茶室も造り上げており、まさにビル街の「壺中の天」である。

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