法 隆 寺 大 宝 蔵 殿

 西院から出て、鏡池の前にある聖霊殿の前を通って、大宝蔵殿に行く。ここで見るべきものとしては白鳳時代の夢違観音、飛鳥時代の百済観音、推古天皇所持の仏殿と言われる飛鳥時代の玉虫厨子、蓮地の上に坐す金銅阿弥陀三尊をご本尊とする白鳳時代の橘夫人念侍仏などである。中でも百済観音が最も有名である。この観音様について、亀井勝一郎は「大和古寺風物誌」に次のように書いている。

  「百済観音の前に立った刹那、深淵を彷徨うような不思議な旋律が

   甦ってくる。仄暗い御堂の中に、白焔がゆらめき立ち昇って、そ

   れがそのまま永遠に凝結したような姿に接するとき、我々は沈黙

   する以外にないのだ。その白焔のゆらめきは、おそらく飛鳥人の

   苦悩の旋律でもあったろう」

  昭和十二年の秋に、亀井勝一郎がこの百済観音を始めて拝観したときには、この観音様は金堂の中に橘夫人念持仏や天平の聖観音像と一緒に祀られてあったようである。亀井勝一郎が述べているように仏像は博物館や宝蔵館に安置するべきではないのであろう。私は何度拝観しても、この百済観音にさほど感銘を受けないのであるが、その理由のひとつとして宝物館の中に安置されているということもあるのかもしれない。この百済観音もやはりお御堂の中に、崇拝すべき仏様として祀られるべきなのであろう。法隆寺もこのことはよく理解しているらしく、現在百済観音堂を建立すべく浄財を集めているところである。僅かばかりの寄進をする。

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